江崎てつま Tetsuma-net.com


平成18年03月29日 参議院災害対策特別委員会

○藤原正司君 民主党の藤原でございます。
 私は、ある意味では選挙区、地域をお持ちの先生方の場合、言いにくいことを私が申し上げるかもしれませんが、是非誤解なさらないように聞いていただければと思います。
 私は、この災害対策特別委員会、昨年ですか、で九州の台風、あるいは今年に入りまして北陸地方の雪害、こういうところを視察さしていただきました。また、一昨年には新潟中越地震というものも発生しまして、あれらの被害を考えたときに非常に共通的な問題があると。地震にしても豪雪にしてもあるいは台風にしても、これは自然現象であります。この自然現象とその共通的である過疎、高齢、空洞というこの三つが重なり合うと大きな被害になってくる、あるいは被害からの、災害の復旧が大変遅れると、こういう現象が出てくるわけでありまして、これからこういうところに対してどういうメスを入れていくのかということが災害対応上にとっても極めて重要である、こんな視点から質問さしていただきたいと思います。
 御承知のとおり、昨年から我が国の人口は減少の時代に突入をいたしました。年金改正時に政府が予測したよりも二年も早く減少時代に突入をしたわけであります。約一億三千万というピークであった我が国の人口は、恐らく二〇三〇年には一億一千八百万、さらに二〇五〇年、今世紀の中ごろには一億人を切るんではないかという見方がされておりますし、また、この中の年齢構成といいますか、こういう面で見ますと、現在の現役世代が約七千八百万、六一・三%を占めているのに対して、二〇三〇年にはこれが六千四百万、数にしまして一千四百万人減り、率にして七・二ポイント減少します。これに対して、逆に高齢世代は、現在が二千五百万、全体の一九・四%というものが、二〇三〇年には数で三千五百万、比率でいきますと二九・六%。要は、一千万人高齢者は増えて、率にして一〇・二%増加する。すなわち、少子高齢化というものを伴った人口減少というのはこれから急激に進行していくというのは、これはもう間違いのないわけでございます。
 ただ、これは国レベルの話でありまして、例えば都道府県単位あるいはもう少し小さい行政区単位で一体どうなっていくんだろうかというのはなかなか推計が難しいようであります。国単位の場合は人口移動はほとんど考えなくてもいいんですが、これを細かく区切れば区切るほど人口移動がありますので推計に誤差が出やすいと。しかし、今日までの傾向から推し測る限り、地方において少子高齢化といいますか、高齢化あるいは過疎化というものがますます進行していくんではないかというのは想像に難くないわけでございます。一方、我が国の財政は、御案内のように、国、地方合わして七百八十兆円の借金があると。しかも、当面これはずうっと増えていくと。大変財政事情は厳しいものがあると。
 こういう中で、今まで一億三千万人用に形成してきた我が国の国土というものを、人口がこれからどんどんどんどん減っていく。そして、地方においては過疎化、高齢化が進んでいくという中、しかも財政的には大変厳しくてなかなか対応ができない。ある人の試算によれば、現在の公共的な設備、道路とか橋だとか、そういうものを維持するだけでも、もう近い将来、今の公共事業費は全部それに食われてしまうと、新しいものを何か造っていこうというのはできなくなってしまうというふうな見方をする人もあるように、一億三千万人用につくった国土というものを、今後、こういう少子化、高齢化、人口減少、財政のピンチという中でどういうふうに我が国の国土というものを描いていけばいいのか。この点について、国土交通省、まあ大臣がおられないいうんで、責任ある方の御答弁を求めたいと思います。

○副大臣(江崎鐵磨君) 藤原先生おっしゃられるように、少子高齢化、本当に憂慮に堪えない次第であります。人口の減少は、当然、国力の低下にもつながります。
 そして、先生の御質問ですが、この人口減少は、地域社会の維持、また国土の保全管理、経済などに大きな影響を与えること、御承知のとおりであります。我が国も、政府も、この深刻な問題をとらえて早急に取り組まなければならない、強い思いを持って今日に至っております。
 具体的には、今後、特に地方において大幅な人口減少が予想される中、地域社会の維持が困難な地域の拡大、森林、農地の荒廃などの問題が深刻化するときに、また都市においては、急速な高齢化などに伴いニュータウン等のオールドタウン化、中心市街地の衰退などが当然予想されるわけであります。
 現在策定中の国土形成計画においては、特に市街地の再編や森林、農地の適切な管理など、人口減少下における国土利用上の課題への喫緊な対応、都市と農山漁村の交流や観光産業の振興、二地域居住の促進等による地域の活性化並びに防災・減災対策の推進を始めとする安全、安心な国民生活の実現を志し、既存ストックの有効活用などによる国土基盤整備などの政策課題について真摯に取り組んでいるところであります。
 人口減少社会にふさわしい、豊かで安心できる国民生活の実現に向けた国土のグランドデザインを国土形成計画において今後しっかり提示してまいります。


  <中略>


○藤原正司君 今おっしゃる住民合意というのは極めて大事な問題だと思っております。
 今、二つの事業、私が指摘したようなケースに対して二つの事業が適用されるかというと、結果的にどちらも引っ掛からないんです。過疎化という問題に対して何らかの手だてを講じるという視点でもなければ、もう現に災害が起きる、あるいは起きて被災する可能性が高いので、危ないですから引っ越してくださいよというものでもない。それだけに、二つの事業はまともにいくと適用対象にならないということであります。
 もちろん、私は、そういう過疎化されたへき地であったとしても、生まれ育った地域でありますから、そこで生涯を終えたいという思いは極めて強いものがあると思いますし、それは大変大事にしていく必要があると思っています。しかし一方で、人口減少がどんどん進行していく中で、地方を中心に高齢化、過疎化というのはどんどん進んでいくこともこれまた事実でございます。
 市町村合併して行政の効率化ということは確かにある。それはもちろん首長は一人で済むわけですし、議員さんも少なくて済む。あるいは組織、役所の組織にしたって重複した部分を効率化できる。いろんなものはあるけれども、結果として、市町村合併によって面積が二十倍になったけれども人口は二割しか増えていないとか、あるいは都道府県の二割を占める市になったんだけれども人口は五%しかいないとか、そういう非常に広大なエリアを持つに至っている新しい市が、あるいは町が発生をしているわけであります。
 しかも、そういうエリアが広大になっているということと、しかもそこは過疎化されて高齢世帯がたくさんお住まいになっていると。こういう中で行政効率というのはますます低下しているわけで、コストは増大をしていく。結局はそれは国民負担という形で支えていかなければならないわけで、この二つの要請、住民側の要請とこれからの行政コストという要請、どううまくマッチングさせていくかということは大変大事なことではないかなというふうに思うわけであります。
 私は、その場合に、一番先に戻りますが、一億三千万人用に形成した国土は何が何でも守らねばならないというふうに立つのか。例えば、先ほど言いましたように、非常に奥の方の過疎化された地域で、そして道路が寸断されて、非常に回復には高額の費用が掛かる。影響があるのはそこの数名、数戸の家だけだという場合に、本人、住民の同意を得ながら里へ引っ越していただくと。そのことによって膨大な復旧予算は軽くて済むし、引っ越し予算、仮に、私はおりたいんだと、道路さえちゃんと直してくれりゃ今までどおり生活できるんだからおりたいんだということに対して、何とか同意をしてもらおうと思えば、ほとんど負担のない形で引っ越ししていただくと。
 もう高齢世帯なんですから、そんな今更自分のお金で立派な家建てたって、あと何年住むか分からないという方もおられるわけですから、金の支出の大きな負担が伴わないような形で、例えば里へ引っ越していただく、そのことによって膨大な設備復旧予算は軽減される、そして過疎化対策も成るというようなことが、僕は、画一的に一斉にやれという意味ではなくて、そういう事象事象が起きたときに、そういう選択肢というものがあってもいいのではないか。
 道路についても、昨日、役所の方にお尋ねすると、廃道という制度がある、道路をなくすという制度はあるけど、廃道というのはまず現実的にはほとんどあり得ないとおっしゃった。確かにそうです。今まで道路あったものをもうほったらかしにするというのは大変なことだ。大変なことだけれども、それは一億三千万人がこれまで活動してきた、その支えるものとしてやってきたわけで、これからどんどんどんどん減っていくときに、今までどおりのものを維持しなければならないという原則を絶対に持ち続けなければならぬのか、場合によっては原則外という運用も可能なんだという選択肢を持ち得るかというのは、私は、これから本当に大事なことではないか。
 その意味では、私の指摘した事例というのは、災害復旧というものと過疎化対策というものをうまくひっ付けて、結び付けて、そしてできるだけ住民の負担がないように、そして合意が得られるような形、こういう事業というもの、こういう選択肢というものがあってもいいんではないかと。そういう検討する余地があるんではないか。これからの、今までの原則というものを少し超えて原則外という在り方を考えてもいいんではないかと、こういうふうに思うわけでありますけれども、この点についてお考えをお聞きしたいと思います。国土交通大臣はいないので、副大臣。

○副大臣(江崎鐵磨君) 非常に藤原先生の御意見、新しいお考えだと先ほど来伺っております。
 ただ、これはかなり啓蒙啓発も必要でしょうし、先ほど御高齢の方といったお話がございました。過疎地に居住する御高齢の方、御高齢の方になればなるほど自治愛郷というか、自分の生まれ住んだところ、どんな事情があってもなかなか立ち退きたくないと。さあ、これをどう説得するかといったことを、私は非常に至難であり、ただ藤原委員のお話、これ正に新しい御意見であり、私どももくみしながら今後の私は課題にするのがベターではなかろうかなと、そんな思いで伺っておりました。

 
Copyright (C) Tetsuma Ezaki office All Rights Reserved.